セミナーレポート

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生と死をみつめるシンポジウム2021.3.11.

第8回 バチカンより日本へ祈りのレクイエム2021

小金井特別講演

生と死をみつめるシンポジウム

 

黙祷 

東日本大震災や新型コロナウイルス感染症で、大切なひとやものを失った全てのひとに、国境や信仰・立場を超えて祈ります。

●特別ゲストとしてバチカン政府代表の、フランチェスコ・モンテリーズイ枢機卿をお招きする予定で準備を進めてまいりましたが、今回コロナ・パンデミックの影響により、残念ながらご来日が叶わず、ビデオメッセージを頂戴しました。

代わって真言宗真蔵院ご住職、狐島法夫氏によるご発声で、14時46分一同黙祷を捧げました。

 

第1部 講演 東日本大震災から10年

このコロナ禍の中で悲嘆(グリーフ)といかに向き合うか

講師 橋爪 謙一郎氏(一般社団法人グリーフサポート研究所代表理事)

大切な人を亡くした時、人がいつものその人でいられなくなってしまうのは、ごく自然なことです。

体調を崩したり、食欲や睡眠に障害が出たり、感情が大きく波立ったり、反対に心が動かなくなったり…

不安や、罪悪感、後悔の念に襲われたり、物忘れがひどくなったり、人づきあいが面倒になって孤立してしまうこともあります。

自分にそのような変化が起こると、「自分がおかしくなってしまったのではないか」と戸惑ってしまいます。

そして周りの人は何とか元気になってほしい、早く立ち直ってほしいと、励ましたくなります。

けれども、直後のショック状態を過ぎて、余裕が出てきたからこ湧き上がってくる悲しみもあります。

グリーフはなくならないかもしれません。

それでもグリーフのしくみを知ることで、自分や周りの人のグリーフとの向き合い方を変えていくことはできます。

大切なのは、心の器に蓋をして、感情を閉じ込めてしまわないようにすることです。

心の奥底に溜まった悲しみは、涙として流すことで、ストレスホルモンを排出してくれます。

グリーフに、たった一人で向き合うことは、とても困難なことです。

必要なとき側にいてくれたり、ただ話を聴いてくれたり、一緒に泣いてくれる人がいることが励ましになります。

できれば助けを求める人を一人にしぼらず、何人かで支え合えると良いでしょう。

◇スタッフより

グリーフは死別に限られたものではありません。

離別や、環境の変化、無くし物した時など、いつでも誰にでも起こり得ることです。

今日、誰かが私のグリーフを支えてくれたら、明日は私が、また誰かのグリーフを支えられるかもしれません。

そのような繋がりによって、もっと居心地の良い社会を作れるのではないかと感じた講演でした。

 

第2部 パネルディスカッション

グリーフを抱えるひとをいかに支えるか

パネリスト 狐島 法夫氏(真言宗 真蔵院 住職)

パネリスト 西尾 温文氏(一般社団法人 The Egg Tree House 代表理事)

パネリスト 橋爪 謙一郎氏(一般社団法人 グリーフサポート研究所 代表理事)

パネリスト 是枝 嗣人氏(小金井祭典株式会社 代表取締役)

ファシリテーター 小川 有閑氏(浄土宗 蓮宝寺 住職)

 

第1部では、主に個人間のグリーフサポートについて学びました。

人と人、点と点をグリーフサポートという線で結ぶというお話です。

続いて第2部は、グリーフサポートを必要としている方々を面で支える、居場所作りのお話から始まりました。

 

The Egg Tree House

大切な人、身近な人をなくした子ども、若者、大人のグリーフに寄り添い、見守る家を作るため、西尾氏ら3名によって設立。

狐島氏、小川氏、是枝氏や、多くのファシリテーターに支えられ、運営されています。

家族をなくした子(5~18歳)とその保護者対象の「たまごの時間」

ひとり親家庭対象の「たまごの時間」

中学生以上の自死遺族対象の「そっとたまご」

中学生以上の遺族対象の「ほっとたまご」

死別体験にかかわらず、グリーフを抱えている19歳以上の人のための「たまごカフェ」

今、ロナ禍の現状の中で、zoomも利用しながら工夫して活動しているが、キャンプができないなどの課題があります。

 

やわらかな心

狐島氏:人の心がボールのような形だとすると、グリーフを抱えた人の心の外側は固くなっています。

それでも、固くなった心の真ん中は、やわらかいのです。

だから、やわらかい心の人が側にいてくれると、固くなったところが、またやわらかくなれるのです。

 

信頼

橋爪氏:信用には、担保がいります。

けれども、信頼に担保はいりません。

人と人のあいだに安心感があれば、それだけで信頼が生まれます。

子どもがグリーフを抱えていると、親は心配になりますが、その前に親自身のグリーフワークをすることも大切です。

それによって、自然と子どもは元気になっていくことがあります。

 

「触れる」こと

狐島氏:娘さんを亡くされた初老の夫婦がいました。

男性は、悲しむ妻を責めたり、亡くなった娘をののしったりしていました。

ある時ふと背中に手を当てて触れてみると、その男性は、初めて泣くことができたのです。

私の手が、しっとりとした、やわらかい手であったので、心が伝わったのでしょう。

 

グリーフを抱えている人に、どのように触れ、支えればよいですか

是枝氏:人によって距離が違いますが、言葉がいらないこともあります。

ただ隣にいるだけでよいことも。

橋爪氏:大人の男性は、正しいことをしようとしがちです。

正解ではなくても、自分らしくあることを許てあげられるとよいでしょう。

 

葬儀屋さんは、自分の辛さをどのように解消していますか

是枝氏:お葬式で葬儀屋が泣くものではないという人もいますが、私はお客様との信頼が得られれば、涙を流すことがあってもよいと思います。

あとは、奥さんと朝のコーヒータイムに話したり、会社のみんなに慰めてもらっています。

 

子どもへの対応

参加者:訪問薬剤師をしています。

深刻な病状の方へお薬を届けにいくことがあります。

まだ小さいお子さんがいらっしゃることもあります。

その状況を子どもは知らない方がよいのか、知らせた方がよいのか、考えることがあります。

橋爪氏:私自身、子どもでも、辛いことでも、本当のことを教えてほしかったと思った経験があります。

さまざまな事情や、お子さんの状況によりますが、私は、子どもは安心できる環境があれば、たいていのことは理解できると思っています。

一概に言った方がよいというわけではありませんが、子どもの力を信じてあげることは大切だと思います。

◇スタッフより

パネラーの方々の声は、静かで温かく、心に響きました。

客席の皆様も、お一人お一人の経験と照らし合わせ、ご自分のこととしてグリーフに思いをめぐらされたのではないでしょうか。

東日本大震災から10年という今日の日に、たくさんの人々の熱い思いが結集して、今回のシンポジウムが実現しました。

生と死をみつめる時間を皆様と共有させていだだき、これからの明るい未来につながることを願っています。

本日はありがとうございました。

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